あれは―確か良く晴れていた日だったかな。
初めてお城・・・家から出た日。
護衛の人達も付けないで、僕一人で、初めて外に出た。
今までずっと窓からしか眺められなかった―外の世界へ。

『・・・キラ、と言うのか』

城下街で迷子になって・・・困っている所を助けてもらった。
翡翠色の綺麗な瞳。優しい微笑みを浮かべている彼に―ドキリと胸が高鳴る。

『あっあの・・・ありがとう御座います!』

高鳴る胸の鼓動を抑えながら、御礼を言った。

『俺はアスラン。・・・ここの衛兵なんかやってる。それにしても、初めて見る顔だな』

疑問を浮かべている彼―アスランに、僕は無理矢理作った笑顔でそれに答える。
アスランは少し苦笑いをして、『ごめん』と謝った。

『困らせるつもりは無かったんだ。だけど、その・・・あまりにも綺麗だから』

『―・・・綺麗?僕が・・・?』

『そうだよ。キラの他に誰がいるんだ?』

驚いた表情をしている僕に、またもやアスランはクスリと可笑しそうに微笑む。
―この世界には、僕が知らない事が・・・いっぱい在る。

『・・・アスラン、僕・・・此処に来たの初めてなんだ。もし良かったら、此処の事、教えてくれないかな?』


それが、僕たちの初めて出会った時。
まだお互いを良く知らなくて、お互い・・・探り合っていたけど。
でも・・・僕はそんな時間が好きだった。
君と一緒に居る時間が、僕の何よりの楽しみだったから。

だから―





 remmber −物語の始まりは、いつも突然に−





「―キラ様、もう時間です」

身の回りの世話をしているメイドが扉をノックすると、扉が開き、
中から長い茶色い髪を一つに束ねている少年が慌てて顔を覗かせる。
少し頬を紅潮させた少年は、透き通る紫色の瞳を見開いて、口をパクパクさせた。

「えっ―もうそんな時間なんですか!?少し待っていてと父とカガリにお伝えできませんか?」

「それは無理ですよ」

頭を抱える少年―キラにメイドは可笑しそうに微笑む。

「あの・・・やっぱり、僕はドレスなんですか・・・?」

「―そうですよ?カガリ様は、今回も断固拒否されましたので・・・残念ですが」

キラは双子で、その片割れである少女―カガリは、小さい頃から男らしく育った挙句、ドレスを着ないと宣言した。
それは生まれて16年たった今でも・・・残念ながら変わっていない。

「・・・分かりました。やっぱり少し時間を下さいと・・・お伝え下さい」

暗い表情で扉を閉め、キラは溜息を吐いた。
しょうがないとは思っているけど―やっぱり・・・この歳では性別なんて誤魔化せないだろう。

「今日は・・・絶対アスランと会いたくないよ・・・」

ウンザリした気持ちでクローゼットの戸を開けると―ずらりと並んだ、様々なドレスが目に入った。
カガリの為に、ではなく、キラの為に買われたドレスである。
その中から、深緑の生地を下地に白色の薄い生地と淡いライトグリーンの薄い生地を二層に上から縫い付けてある、
ふんわりとした編み上げのノースリーブのロングドレスを一着取り出した。
今の季節に合った、割とシンプルなドレスである。

「・・・髪は、下ろしたままで・・・確かかすみ草と鈴蘭の髪飾りがあったはず」

キラは慣れた手つきでドレスを着て、太腿の下まで伸ばした茶色の長い髪を梳かす。
そして、鏡に映った自分の姿を見ながら髪飾りを付けた。
―鏡に映る自分は、ドレスが似合っている。

「男なんだけど・・・」

小さい頃は女の子とよく間違えられていた可愛らしい顔立ちがの少年が、今も目の前に居た。

「不愉快だ・・・」

少し項垂れてから、キラは薄い生地で出来た白いカーディガンを羽織り、部屋から出る。
部屋の外に出たら・・・自分は女の子だ―。
そう自身に言い聞かせながら、キラは大広間に続く廊下を歩く。

「―キラ。遅いじゃないか」

待ちわびたようにキラに声を掛けた、セミロングで癖毛の金髪の少女―カガリ。
彼女はやはり黒いスーツを着ていた。

「・・・君がドレス着てないって言ったから、ドレスに着替え直してたんだよ」

拗ねた表情を浮かべたキラに、カガリは鮮やかな金色の瞳を細めながら笑う。

「お前、ちゃんと着こなしてるじゃないか。それに、そんな表情を浮かべてると・・・益々可愛く見えるぞ」

カガリは笑顔を浮かべても凛々しくて、仕草は―何処と無く紳士を思わせた。

「―ごめんな。私の我侭で」

急にカガリらしく無い言葉を聴いて、キラは驚いて目を丸くする。
そして、笑顔が申し訳なさそうな表情に転じた。

「お母様に言われたんだ。"16歳の誕生日までもキラに女の子の格好をさせるの?"って」

そりゃあ言われるだろうな―とキラは苦笑しながら、カガリを見る。
カガリは、今にも泣きそうな顔をしていた。

「しょうがないよ。この国の人達は僕達を"双子女の子"と思ってる。
―違う。性別の違う双子なんて、本当は生まれちゃ駄目なんだよ」

ハッとして、カガリはキラを見る。
キラは―見ていて自身が痛くなるような・・・悲痛な表情を浮かべていた。

「僕が生まれてすぐに、殺されなかったのは・・・お父様とお母様がお優しいからだよ?」

「・・・だからって、お前・・・嫌なら嫌と言えばいいのに!」

―キラがドレスを着ている理由は、つまりこう言う事なのだ。
双子は普通、"国"では同姓同士となっていた。
だが、キラとカガリの母親が少し"特殊"な為―異性同士の双子が生まれた。
それがこの国の王の子供となっている為、本当の性別を隠すしか無いのだと言う。

「・・・僕がスーツを着たら、体格が丸分かりになるんだよ。もう―16になるんだよ、カガリ」

「しょうがないよ」と再度言って微笑んだキラを、カガリは真っ直ぐ見つめた。

「なら、私は―一生お前を守る。なにがあっても、絶対に」

「・・・どうしたの?急に」

「毎年してるだろう?誕生日の契り、だよ。さ、行くぞ!」

珍しく色々と嬉しいことを言ってくれるな、と思いながら、カガリの後を追った。




花々しく彩られた大広間に、大勢の貴族達が集まっている。
白いテーブルクロスが敷かれた机の上には、豪華な料理と飲み物が所々に置かれていた。

「―王女様方。この度は16歳の誕生日を迎えられた事を、お喜び申し上げます」

貴族の男性の一言で、この場に居る貴族達が深々と頭を下げる。
すかさずカガリが「頭を上げなさい」と言い、一歩前に出た。

「今日は私達の為に集まって頂き、ありがとうございます。私たちは―」

キラは声変わりした為、今年からカガリが言う事になった礼の言葉を聴きながら、キラは視線を泳がす。
やたらと同い年の少年が多い。

「・・・うげ」

婿候補とか言うんだろうなー、と思い、キラは小さく呟いてしまった。
そうこうしている内にカガリは言い終わり、また人々の笑い声や話し声などで辺りは賑やかになる。

「・・・今年はどうも同い年の人達が多いよな」

「僕もそう思う」

16歳と言えば―そろそろ結婚しても良い歳でもある。
キラとカガリはウェイターから飲み物を受け取りながら、苦笑いを浮かべた。

「・・・お父様は何を考えているんだ。・・・キラは・・・違うのに」

「きっとカガリじゃないかな。お父様は、僕の性別を忘れてないと思う。・・・多分」

「私はまだそんな気は無い。しかし、言い切れないよな・・・お父様の性格上からして・・・」

「でもカガリ、ちゃんと考えなきゃ駄目だよ?王位を継承するのはカガリなんだから」

ひそひそと話し込んでいる双子に、執事が「姫様方」と声を掛ける。
慌てて同時に振り向き、キラとカガリはこくりと頷いた。

「ああ、分かってる。―城下街側の入り口だな」

「左様でございます。国王様と王妃様は、もう入り口で待機されていますぞ」

再度頷いてから、キラとカガリは歩き出す。
赤い絨毯の上を静かに歩きながら、カガリは少し唸った。

「・・・私が王位継承なのは分かってるけど、結婚はする気は無い」

不機嫌面のカガリに少し苦笑しながら、キラはカガリの頭を撫でる。

「さっきのお礼の言葉、カガリらしくて良かったよ」

キラの言葉に対し、カガリは頬を赤く染めた。

「・・・ありがとう。でも、頭撫でるのは止めてくれないか?キラが"お兄さん"みたいに見える」

「え?違うの?」

「お前は弟、私が姉。昔からそう言ってるだろ?」

二人は可笑しそうに微笑みながら、ふと辺りが騒がしいのに気づく。
―徐々に入り口が近づいているのだろうか。

「・・・おかしい。衛兵達が居ない・・・」

カガリはそう呟いて、ハッとした。

「―キラ、戻った方が良い」

急いでカガリはキラの手を引き、今来た道を引き返す。
キラは「ちょっと待って!」とカガリの手を振り解いた。

「・・・もしそうだとしても、お母様が居るから、大丈夫だよ!」

こんな時に双子は嫌だな―とカガリは思いながら、入り口に向かって走り出したキラを追いかける。
そして―


「お父様・・・お母様!?」


大きな木製の扉の前には、ガッシリとした体格の男性の前に、お母様と呼ばれた女性が杖を持ち、相対している。
その二人の傍らには、お父様と呼ばれた男性が血を流して倒れていた。

「―ほう・・・姫様方ですか」

「キラ!カガリ!早く此処からお逃げなさい!」

素早くキラの前に出たカガリが、母親の前に居る男性を睨み付ける。
よく見れば、扉付近には息絶えた衛兵達が倒れ、場所全体が血の臭いで満ちていた。

「私は魔女討伐に命を捧げる者です。この度は、姫様方の誕生日祝いに来させて頂きました」

魔女討伐―。
世界中の"呪われし者"や"穢れた者"として扱われている"魔女"を始末していく者達を指す。

「・・・お母様・・・ッ!!」

キラは今にも駆け出しそうな勢いで、カガリの腕から身を乗り出す。

「キラ・・・駄目だ・・・お前が行ったら、駄目だ・・・!」

出来るだけ辺りに響かないように呟くカガリの声が耳に入り、キラはグッと堪えた。

「そう、良い子だ。・・・私があいつの目をを惹く。だから・・・お前はお母様と一緒に逃げろ!」

カガリは懐から護身用の短刀を出し、敵である男性に向かって走り出す。
彼女を引き止めようと、キラは反射的に手を伸ばしたが―何者かによって阻まれた。

「―駄目ですよぉ?姫様・・・いいえ。王子様まで命を捨てる気なんですか?」

「油断も隙も無いなんて、流石・・・あの"魔女"の子供だけあるわね」

キラの紫色の瞳が不安で揺らぐ。
止めようとしたのを阻んだのは、キラ達の身の回りの世話をしているメイド達の内の二人だったからだ。

「そんな・・・ルナマリアもメイリンも、どうして・・・?」

驚きを隠せないキラに向かって「鈍感な王子様なこと!」と、メイリンと呼ばれた少女が腹を立てる。

「私達の親は・・・魔女に殺されたんです。生体実験の対象になって」

メイリンの言葉に頷いていたルナマリアと呼ばれた少女は、キラの白い首筋に短刀を突きつけた。

「少しでも動いたら、本気で刺すから」

う、とキラは押し黙り、母親とキラの目の前で男性に首を掴まれたカガリを見ている事しか出来ない。
苦しそうに喘いでいるカガリを見て、キラも苦しくなり手で首を押さえた。

「へぇ・・・これが双子の"シンクロ"かぁ・・・」

物珍しそうにキラを見るルナマリアは、首筋に突きつけた短刀を放さない。
惨めで、苦しくて、悔しくて―。
涙が溢れて滲んだ視界で、キラはカガリと母親が倒れるのを見た。

「―ッ!!」

声にならない悲鳴が飛び出す。
その瞬間―左腕が燃えるように熱くなり、思考が真っ白になった。

「きゃあああっ!!」

ルナマリアとメイリンが謎の力によってキラから弾き飛ばされ、壁に激突し、二人とも気を失う。

「何・・・!?」

驚きを隠せない声音を発した男性がキラを探すと、キラはカガリと母親の所へ駆け寄っていた。

「お母様!カガリ!」

気を失っているカガリと、血だらけの母親―。
二人とも息をしているが・・・助かるかどうか、分からない状態だ。

「・・・キラ・・・貴方は私の血を受け継ぐ子・・・」

茶色の髪、紫色の透き通った瞳―。
カガリととてもよく似た母親の顔が涙で歪む。

「私の血の呪縛・・・貴方はどう思っているのか分からないけど・・・」

頬に伸びる母親の手を握り締め、キラは耳を傾けた。

「この能力は、呪われた者の証・・・そして・・・逃れられない運命が在る・・・」

「お母様・・・もう喋らなくて良いですから・・・ッ!」

傷口から溢れ出す血、左腕から身体中に這って行く呪縛の刻印。
魔を操る者の死を意味する刻印の汚染が、おぞましいぐらい速かった。

「だけど・・・キラ・・・貴方の生まれた世界は・・・貴方のものだからね・・・」

ピシリ、と身体中にひびが入り―母親は砕け散った。

「・・・許さない・・・僕は、お前を・・・絶対に許さない!!」

キラは男性を睨みつけ、叫ぶ。
怒りと憎しみに揺れる紫色の瞳が、大きく見開かれた。

「何・・・何なの・・・!?」

熱を発する左腕から、全身に膨大な力が駆け巡る。
どうしたら良いか分からない、と言った表情をしているキラを見て、男性は笑った。

「さっきの威勢はどうしたんだ?お前も・・・私に殺されたいのか?」

「―違う・・・僕は・・・殺したくない!逃げて!ルナマリアとメイリンを連れて!お願い!」

キラの身体が白色の強い光で輝きだし、その場所一面に広がる。

「うわああああ!!」

城中が―光に包まれた。





王族の誕生日を祈る日は、特に忙しい。
衛兵だし、下っ端でも無いけど・・・守りを徹底しないと、上が五月蠅いから。
しょうがないよな・・・って思って、いつもの場所に、いつもの様に突っ立ってた。

今日は来ないのかな、あの子。
女の子みたいな可愛い顔して、実は男だって言い張る少年。
馬鹿みたいに天然で、危なっかしくて。
何処かほっとけない奴。

「来ないかなー来ないよなー」

「・・・なんだお前は。騒々しい」

「アスランも忙しいんですよ。ここは我慢して下さい」

若草色の柔らかな髪色の少年―ニコルと、銀色の硬質な印象を受ける髪色の少年―イザーク。
どっちとも・・・かなりの権力を持つ貴族のご子息だ。そして、俺の友人。

「俺達より力が上のお前がこんな事してるなんて、笑うのにも程があるよな」

苦笑いを浮かべる金髪の輝く髪色を持つ、褐色の肌の少年―ディアッカも、友人の一人。
どうして勢ぞろいしてるんだ・・・と、ちょっとがっくり来た。

「アスラーン・・・って笑顔で呼ばれたいだけなんだろ?」

俺が待っている相手のマネをする先輩―ハイネは、悪戯っぽく笑ってみせる。
先輩に言われても嬉しくないし・・・!気持ち悪いだけだ・・・。

「ですけど・・・アスランが言う"キラ"と言う男の子は、実際・・・この国のお姫様と同じ名前なんですよね」

「男勝りなお姫様と、スッゴイ可愛いお姫様。その可愛い方のお姫様なワケだな」

男勝りのお姫様と可愛いお姫様・・・?
確かこの国の王女は二人居て・・・と言うか、双子だったな。

「・・・じゃあ二卵性の双子なのか・・・」

ポツリと俺が呟くと、ハイネとディアッカ、そしてニコルまでもが不適な笑みを浮かべた。

「玉の輿か」
「玉の輿ですね」
「お前良い度胸じゃねーかー」

「ッ!関係無いだろ!」

一気に顔が赤くなるのを感じる。
まだ姫様って決まった訳じゃ無いだろ・・・!
妙に動揺して言い返した俺は、皆と反対方向を向いて腕を組んだ。

「―じゃ、俺達はこれからそのお姫様に会いに言ってくるよ」

「行くぞ、イザーク、ニコル」とディアッカは言って、城下街側の城門に続く階段を上り始める。
今日は姫様達の婿探しも兼ねたパーティーが開かれているらしい。
各国の王子とか、ニコル達のような有力な貴族達とか―兎に角、同年代の男子が集まっている。
俺もその中に入るはずなんだけど―。

「"MISSLINKAGE"国・・・4代目国王パトリック・ジャスティン・ラディオルと、女王レノア・セヴェリス・ラディオルを
親に持つ―第1王子アスラン・ジャスセリア・ラディオル」

ハイネに"本当の名前"を言われ、俺はハッとして振り返る。

「"ラディオル流"と言う王家独自の剣舞の流派を持ち、武術に長けている―」

何故か俺に迫ってくるハイネに、俺は気圧されて一歩引き下がった。

「その技術は他のどんな剣舞―俺の使う"イグナイテッド流"よりも上・・・と言うか、最強と言われてる」

「・・・どうしたんだ、ハイネ」

ジリジリと近づいて来るハイネの雰囲気が、少し恐怖に感じる。
ハイネはニヤリと笑って、俺の肩を掴んだ。

「俺たち衛兵にとって、剣舞の強者は憧れの的なんだ。だから―」

空いている手が自身の腰にある剣の柄を掴み、スラリ長いと鋭い刃を持つ剣を抜く。
背筋が沸き立つ汗が"危ない"と宣告した。

「―ちょっ・・・!」

俺に向けられていた刃が、俺目掛けて振り下ろされ―鈍い音と短い断末魔が背後から聞こえる。

「まあ、つまり、命も狙われるって事だな、新米☆」

―・・・ビックリしたぁ・・・。

「・・・とにかく。少し様子がおかしい」

俺の背後に居た謎の男・・・。
祝いの日に大勢の人ごみの中で蠢いているのは・・・―。

「―ごめん、ちょっと様子を見に―」

その時、地面が揺れて地響きがした。
縦揺れの激しい揺れが、その場に立っていられなくなるぐらい強くなり―城の方から、白い光が辺りを包んだ。

この光は―以前、聴いた事がある。
魔力を制御出来ていない魔女が、魔女になった時に起こす衝撃波。

その光は何もかも奪い去ると言うけど―俺は・・・どうなるんだろう・・・。

思考が真っ白になる中で、俺は―一瞬キラが涙を流す姿を見た気がした。





『―キラ。貴方は私の血を受け継ぐ子』

嫌だ・・・嫌だ・・・。

『はい、お母様』

本当はなりたくない・・・の?

『貴方は魔を操れる。生粋の魔法使いでは無いから―寿命が在るのだけれど』

寿命・・・永遠の命なんて要らないよ・・・。

『ごめんね、ごめんね・・・キラ・・・!』

泣かないで・・・お母様・・・。
ボク・・・ちゃんと魔法使いになるから・・・嫌って言わないから・・・。

『―ら・・・キラ・・・!!』

―あす・・・らん・・・?

「・・・キラ!大丈夫か!?」

薄っすらと目を開けると、綺麗な翡翠色の瞳の見知った顔が映った。
アスランだ・・・生きていてくれたんだね・・・!

「アスラ・・・ン・・・」

喉がカラカラで上手く声が出せなかったけど、気持ちは伝わったみたい。
アスランは優しく微笑みながら、僕の掌を握ってくれた。

「良かった・・・無事で・・・」

そう言ったアスランの横から、一人―オレンジ色の髪色の男の人が顔を出す。

「噂で聴いてたんだけど―女王様、魔女だったんだな」

「それで魔女狩りの犠牲に・・・酷いものです」

またその横から顔を出した淡い緑色の柔らかい髪色の男の子。
この二人にアスランが眉間に皺を寄せた。

「その話はまた後で、だ。まずはキラを何処か安全なところへ―」

「―っ・・・そうは、いかんぞ・・・!!」

城の壁が崩れて下敷きになっていた男性が、呻きながら起き上がる。
その声を聴いただけで記憶がよみがえり、僕の身体は震え上がった。

「どうだ・・・魔女の力は。この城・・・この国を破壊するぐらい・・・強大な力なんだ・・・」

全身に傷を負っている男性は荒々しい呼吸を繰り返しながら、傍らに刺さっていた巨大な斧を引き抜く。

「僕は・・・僕は、こんなつもりじゃ・・・!!」

―心が、痛い。冷たい掌で握り締められた時ぐらいに痛い。
ほとんど瓦礫の山となった城は、僕が壊したの・・・?

「おぞましいだろう?自分がこんな力を持っていては・・・」

「キラ、聴くな!聴くんじゃない!」

アスランに抱きしめられ、思い切り叫ばれた。
反射的に耳を塞ぐ。
もう・・・誰の声も聴きたくなかったから。

「お前―確か"魔女狩り"のメンバーだったな」

苦しげに言うアスランの声が、塞ぎきれない耳の隙間から入ってくる。

「・・・魔女を殺し尽くさない限り、お前の気は晴れないのか?」

その言葉は―命乞いにしか聴こえなかった。

「貴様らに、身内が殺される苦しみが分かるのか!?この貴族どもめ!」

激怒した男性が唸り声のような声で叫ぶ。
叫び声を聴いてアスランや、その場に居る"貴族"と言われた人たちが微かに"笑った"。

「―どうかしてる」

アスランが僕を抱きしめながら、腰に有る剣の柄に手を伸ばす。

「僕たちは―魔女なんて、憎んだことも無いのに」

淡い緑色の髪の男の子が、虚空から槍を取り出した。

「心が狭いっつーのはこう言うことだよな」

やれやれ、と言った感じで、金髪の男の人が背中に背負った大剣の柄を握る。

「魔女よりも恐いものを・・・お前に教えてやろうか」

銀髪の男の人が、腰に有る細剣を抜き、男性に突きつける。

そして・・・アスランが独り言のように呟いた。


「誰も居ない世界に、大切な人が連れて行かれる悲しみを・・・お前は知っているか?」





ふわふわとした感覚の中で、キラは目を覚ます。
まだ覚醒しきれていない思考で、瞳に映る翡翠色の瞳の少年が誰かを思い出させる。

「―おはよう、キラ」

―そうだ、アスランだ。
優しい微笑みを浮かべる彼に少し微笑み返して、キラは身を起こした。

「此処は何処なの?・・・カガリは無事!?」

そう叫んだ瞬間頭に激痛が走り、思わず「うっ」と呻き声を漏らしたキラをアスランがなだめる。

「大丈夫だよ、キラ。カガリはちゃんと無事だから」

アスランは自身の後ろに有るベッドで、寝ているカガリを指した。

「ありがとう、アスラン。・・・でも、頭を強く打ったみたいだ・・・大丈夫かな」

心配そうに呟いたキラは、カガリを見つめる。
カガリは落ち着いた呼吸をしていた。

「・・・僕ね、この国から出て・・・旅をしようと思うんだ」

「え」と驚くアスランに、キラは苦笑する。

「カガリは王位継承、僕は・・・多分"魔女狩り"が来なかったとしても、"魔法使い"になってたと思うから」

そう言って眼を閉じた。

「この力で・・・苦しむ人々を助けたい」

「いつか、君の国にも行くと思うよ、アスラン」と言って、再び微笑んだキラに、アスランの表情が曇る。
不思議そうに見つめるキラの視線を、アスランは自嘲的に微笑んで受け止めた。

「俺の国・・・もう、無いから」

キラは慌ててアスランに謝ると、今にも泣き出しそうな表情になった。

「ええっと、魔女のせいじゃ無いから!・・・ある意味魔女みたいな感じだけど、絶対違うから」

「でも・・・ごめんなさい・・・」

消え入りそうに呟くキラの頭をそっと撫で、アスランは苦笑する。
―俺が・・・滅ぼしたのも同然なんだからな・・・。

「・・・じゃあ、俺・・・もう行くから」

そう言って微笑んだアスランに、キラはこくりと頷いた。

「また会おうね・・・アスラン・・・」

―涙が、溢れた。
その涙を見ないようにキラから視線を放したアスランは、足早に部屋から出て行った。





あれは―確か良く晴れている日だった。
広い草原の一本道を歩いている時。

俺は―運命の人と出会ったんだ。




Next...



+後書き+・・・・・・・・+

なんか妙なもんを書いてしまいましたが・・・(ぇ
オリジナル設定・・・思いっきり趣味でごめんなさい;
読み難い文章でごめんなさい;
.アスランが"アスラン・ジャスセリア・ラディオル"とか言うのは、
アスラン・ザラの"ザラ"から来てるんですよ(ぇ
ザ→ジャスティスとセイバーを掛けて"ジャスセリア"。.
ラ →特に意味は無い・・・(何
"MISSLINKAGE"は"(鎖などと)繋がっていない"と言う意味だったかなー(オィ
自分で作ったような気がする;
当初は"MISSING LINK"でした。
そんな裏設定は置いといて。
これ、まだ続くんですよ(ぇ