―空には入道雲。触ったら、ふわふわしていて気持ち良さそう。
一方、海はしょっぱくて喉が渇く。・・・身体の塩分濃度が増えないだろうか。
そんな場違いな考え事をしながら、俺は海に浮かんでいた。
・・・正しくは、泳ぎ疲れて波にさらわれたような感じ。
「・・・なんだ?お前が疲れているなんて、珍しいな」
「もうすぐ雨でも降るんじゃないか?」と馬鹿にしたような微笑を浮かべながら、近づいて来る友人。
"日焼け"と言う言葉を知らないのか、と問いたくなるような白い肌をしている。
そんな友人―皆城総士は、肩下まで伸ばした栗色の髪を、今はポニーテールにしていた。
「いや・・・空は青いなって思って」
真上には―太陽が眩しいぐらいに輝いている。
今日は快晴だと天気予報で聴いたのだから、空が青いのは当たり前だ。
「・・・お前らしい発言だな、一騎」
呆れ顔で笑った総士がパシャリと俺に水を掛けて来た。
「なっ・・・なにするんだ―っ」
言い返した所で水が掛かるのは止む事がなく、慌ててその場に立ち上がる。
水位は丁度腰辺りだったから、逃げようと足を動かすと水圧がかかり、思うように動かない。
また、総士が俺を挑発するように言葉を言った。
「どうしたんだ一騎!ほら、お前もやり返せよ!」
楽しげな総士の口調が妙に気に障る。
たとえ総士だったとしても、そう言われると我慢なら無い。
「このっ!おりゃっどうだっ!」
バシャリ、と派手に水が舞い上がる音がして、総士の顔面を直撃した。
・・・ヤバイ。
「・・・お前・・・この僕に何をしたのか分かってんのか・・・?」
げっ―総士がキレてる!?
ただならぬブラックなオーラと言うオーラが、背後から出ているような感じがする・・・。
「一騎・・・これもパイロット強化訓練なんだ・・・悪く思うなよ」
総士の口元が不適な笑みで歪んだ。
「いや・・・総士、それはちょっと遠慮させて・・・もらいたい!」
隙あり、と言わんばかりに再度、総士に水を掛ける。
その水を軽々と避けた総士は総士で、俺に向けて水を掛けてきた。
「ふっ・・・まだまだだな」
「ちょ、お前、今鼻で笑ったろう!?うわっ、たんまたんま!」
笑いながら水を掛けてくる総士(想像した事無いような表情)が恐い。
そのままバシャバシャと―妙な水の掛け合いが始まった。
「―なんなのよぉ、あの水の掛け合い・・・」
「あらぁ?真矢ちゃん・・・総士くんに妬いちゃってるのぉ?」
岩場に出来た日陰に座っていた少女―真矢の呟きに、姉の弓子が笑いながら真矢にからかうように言う。
カッと顔を真っ赤にさせた真矢に、近くに居た少女―咲良も笑った。
「そうだもんね・・・傍から見ればただのバカップルだし・・・」
「後輩に何を見せ付けてるのよ・・・まったく」と咲良の笑みも、苦笑に転じる。
「遠見先輩ってぇ、好きな人居るんですか?」
「ドサクサに紛れてそんな事を訊かないの、里奈!」
ワラワラと集まってきた女子軍に、真矢はもうパニック状態になっていた。
「ちょっとぉ、なんなのよ!別に私はそんな気が有って言ったわけじゃ無いのにー!」
澄み切った蒼穹に、真矢の叫び声が響き渡る。
・・・そんな真矢の気を知らずに、総士と一騎は水の掛け合いを続けていた。
−アオゾラの海の下−
海水浴が終わった後―私達は、銭湯に来ていた。
夏の間は週に一回の割合で、パイロット強化訓練として海水浴が行われると・・・お姉ちゃんから聞いた。
だからと言って・・・初日にあんな光景見せ付けられるとは・・・。
「はぁ・・・」
お湯に浸かりながら溜息を零した私に、お姉ちゃんと咲良が興味津々に質問してくる。
「ね、真矢。一騎と総士のお腹・・・見た?」
「・・・は?」
思っていた内容と全然違う質問をされたから、私が目をパチクリさせてると―お姉ちゃんがニヤリと笑った。
「一騎くんってさ、全体的に引き締まってるでしょ?だから、腹筋割れてるんじゃないかなーって思ったのよ」
「でも全然そう見えなくて・・・ぷにぷにしてそうなのよ」と言ってから、お姉ちゃんはくすりと笑う。
「反対に総士はああ見えて筋肉質らしくて、意外と割れてたのよねー」
咲良もなんだかニヤニヤしながら言っている。
この二人・・・今日はいつもと様子が全然違うんですけど・・・。
「あの二人も見習って、あいつらも腹筋鍛えりゃ良いのに」
やれやれ、と言った感じで話す咲良の"あいつら"とは―多分近藤くんと小楯くんの事なんだろうな。
「咲良とお姉ちゃんって・・・そんなに筋肉質の人が好きなの?」
そう二人に訊いてみると、何故かギョッとされた。
「そう言うのじゃないよ。あの二人は昔から仲が良いでよね、って話ですよね、弓子先生?」
「ええ、そうよ。それで・・・真矢はどっちがタイプなのかしら・・・?」
「・・・すまないが、その・・・私も訊かせて貰っても良いか?」
うわあ!なんでそんな事言わなきゃダメなの!?
しかもカノンまで・・・!
「ちょっとぉ!なんでそんな話になるのよぉ」
半分泣きそうになりながら反論すると、三人とも顔を見合わせて「ねぇ?」とうんうん頷いている。
いつからそんなにに仲良くなったんですか・・・貴女達は・・・。
「だってねぇ。いつもほぼ三人で居るでしょう?」
「最近・・・なんか総士と一騎が二人っきりで居る所、よく見かけるしさ」
「もしかして上手く行ってないんじゃないかと・・・その、心配している訳なんだが」
ああ・・・もうなんか頭がくらくらする・・・。
「―って、真矢!ちょっと大丈夫!?」
お姉ちゃんの焦った声が、どこか遠くの方で聴こえた。
「・・・遠見、上せたみたいだぞ?」
「大丈夫かなー」と、壁を挟んで向こう側にある女風呂の声を盗み聞きしていた衛と剣司が言った。
そして妙な笑顔を浮かべながら、二人は総士の隣に居る一騎に向き直った。
「一騎ー・・・お前の腹って・・・ぷにぷにしてるのか?」
一騎がギョッとして総士のうしろに隠れ、総士は逆に焦ったように口を開く。
「ちょっと待った!一騎に触って良いのは、僕だけだ!」
「お、お前って・・・そんなヤツだったのか!?」
ズサァっと一騎が総士から離れ、口をパクパクさせた。
「まあまあ三人とも。そんなに理想の腹筋になりたきゃ、ちゃんと筋トレするんだな」
今まで傍観していた道生がそう言って、一騎を見る。
―妙にニヤリとした笑みが、一騎をその場から動けなくしていた。
「一騎・・・その女子を虜にしている腹筋とやらを、拝見させて頂こうか・・・」
道生の目が不穏な光で輝く。
思わず身体をぶるりと震わせた一騎が急いで湯船から上がろうとすると、衛が一騎に跳び付いた。
「よっし!ナイスだ衛!」
そのまま一騎を羽交い絞めにした衛にパチンと指を鳴らし、剣司は一騎の腹をくすぐる。
「やっ・・・ちょっとやめろって!くすぐったいってば!!」
くすぐったさに笑い始めた一騎を後目に、道生も剣司達に加わった。
「やっぱり細いなー。ちゃんと飯食ってんのか?」
一騎は何とか止めさせようと暴れだした。
どうやら一騎は、道生の言った事に気付いてないらしい。
「おいっ・・・総士!見てないで助けてよ!!」
一騎が助けを求めた総士は―先程から鼻を押さえている。
「もっ・・・止めろってば!!」
諦めたような響きを含んだ一騎の声と、バシャバシャと水が舞い上がる音が男湯に響いていた。
―もう嫌だ。海水浴なんて・・・!!
第二回目の海水浴日和のよく晴れた日。
俺はウンザリしながら海に向かった。
「一騎、どうしたんだ?」
何事も無かったように話し掛けて来る総士。
俺はそんな総士に恨めしそうな視線で一度見て、何も言わずにまた前を見た。
「・・・あの日の事は、すまなかった」
思い出したように、総士が呟く。
・・・謝られても、許さないもん。
「だからって、そんな拗ねた顔するなよ」
「・・・俺さ、総士があの時、俺の身体に触って良いのは僕だけだ、って言った時」
苦笑いしていた総士の表情が驚いた表情に変わる。
俺自身も・・・なんでこんな事を言い始めたか、分からなかった。
「その時は退いたけど・・・あとでよく考えたら、お前の俺に対する気持ちが分かったよ」
自分でも恥ずかしいぐらいに頬が紅潮している事が分かる。
―総士は、こんな俺をどう思ってるのかな。
「俺も・・・その、お前が・・・」
腹筋フェチだった事に気付かなくて、ごめんな。
「・・・か、かずき・・・?」
僕は内心ビックリして、思わず一騎の名を呼ぶ。
すると頬を朱色に染めた一騎が上着を捲くり・・・
「触っても良いよ、総士・・・俺の腹筋が好きなんだろ・・・?だったら、俺さ、幾らでも・・・」
瞳を潤ませて―って、ちょっと待って下さい!
「お前・・・あの時にどさくさに紛れて、頭でも打ったのか?」
平常心を保ちながらそう訊ねる僕に、一騎の瞳からはブワッと涙が溢れ出した。
「頭なんか打ってないよ?お前・・・俺が嫌いになっちゃったのか?ごめんな、お前の理想の腹筋じゃなくて!」
どっかのドラマで見たような演技が目の前で繰り広げられている気が・・・。
僕は涙を流しながら、必死に頭を下げている一騎の背中を擦った。
「腹筋から離れるんだ、一騎。お前は誤解しているだけだ」
そう言うと、逆にばっと視線を僕に合わせた一騎が、叫んできた。
「嗚呼っ図星なんだろ!?図星だからそんなに焦ってるんだろ!?」
「いい加減にしないか、一騎!」
図星ってお前は・・・。
僕が一喝すると一騎は怯えているような表情をしながら、僕と視線を合わせた。
「!・・・ごめん、総士・・・俺・・・お前を怒らせる気じゃ、無かったんだ・・・」
伏目がちに呟く一騎の頭を撫で、諭すような口調で僕は、
「分かったなんなら別に良い。それに、お前は僕が"腹筋フェチ"だと誤解している」
と・・・誤解を解いてくれ、と言う願いを込めながら再度言った。
すると一騎は―今度は、何故か上目遣いで見上げられる。
「誤解なのか?俺・・・お前に触ってもらえるの・・・待ってたのに・・・」
「―!」
ズザァァっと音がしそうな勢いで、僕は一騎から離れる。
驚きを隠せずにあんぐりと口を開けていると、一騎がニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
「・・・総士は・・・小さい頃から・・・俺の事、そう言う対象で見てたんだよな・・・?」
どちらかと言えばそんな気がしない訳でもない。
「えー・・・うーん・・・」
否定も出来ないし肯定も出来ない。
でもそんな対象で見てきた訳でもない。
「言葉を濁す、と言うことは―完全にアウトだよ?皆城くん」
電柱の影から現れた遠見―電柱の影?
「総士がそこまで行っていたとは・・・なんにせよ、真壁に報告する必要はあるなぁ」
あっはっはっは・・・と何処からともなく現れた、溝口さん。
―これは・・・もしや・・・もしやなのか・・・!?
「一騎、お前・・・将来俳優になれるんじゃねぇか?」
「そんな事ないですよ」と満足気に笑う一騎。
そして、今まで見た事無い遠見の表情。
「皆城くん・・・ちょっと時間良いかな・・・?」
凄みみら聴いた遠見の声。
断れるわけ、無いじゃないか。
青空の海の下。
今日も誰かの目が光っている。
Fin.....
+後書+-----------------+
うわー・・・なにこれー・・・(おぃ
いや、キャラ壊れすぎて意味分かんな(言い訳強制終了
・・・兎に角。
本当にスイマセンでした!こんなもの書いてしまって!
腹筋を強調する・・・否、語るのって文にすると難しいですね、本当に;
誰かのキャラを壊さないと私には無理です(ぇ
これ・・・ギリギリセーフですか?
アウトですか?(滝汗
発禁・・・してないですよね・・・これ・・・;
もう読んで下さる方にお任せします(何