もう一度、会って、お前の姿を見たかった。
ちゃんと刻み付けて置きたかった。


あの日、あの時間。


あれが最後じゃないって・・・分かってる。
でも、お前の声が聴きたい。
お前と・・・もう一度話がしたい。

―答えてくれ。
俺の・・・質問に・・・答えてくれよ・・・―。





−蒼空のいろ−





嫌な予感がした。紛れも無い、嫌な気持ち。
胸騒ぎがして・・・感情が言う事聴かなくなって。
頭の中で―「危険だ」って言う警鐘が鳴り響いて。
触手が伸びて―いっぱい・・・いっぱい増えて―

「―総士!?」

お前の声が、聴こえなくなった。
代わりに、CDCの慌てた声が聴こえる。
父さんが―焦ってる。
乙姫ちゃんが・・・苦しんでいる。

「・・・何・・・なんなんだ・・・?」

意味が分からない。
心が痛い、息が出来ない。
どうして・・・?

「総士・・・そこに居る?総士・・・っ!?」

ただ不安だった。
お前が本当にそこに居るのか、不安だった。
腕の骨が軋み、折れるような―腕が千切れるような感覚が走る。
その時、全てが歪んだ。

「一、騎」

俺を呼ぶ・・・総士の声が聴こえる。
それを気に、固いものを無理矢理切った様な重い音が・・・辺りに響いた。

「っあ・・・総士・・・!?」

一瞬・・・何が起こったか分からなくなった。
激痛で頭が真っ白になりそうになった。

でも・・・それよりも。

目の前に、さっきまで確かにそこに居た総士が消えた。
この世界から・・・消えた・・・?

「総士、総士っ!!」

―信じない、信じたくない!
絶対に・・・信じるものか・・・!
そう思って・・・何度も叫んだ。
何度も呼んだ。

「総士・・・総士ぃ・・・!!」

でも・・・返事は返って来なかった。
総士からも、誰からも。
彼が此処に居て、今すぐこっちへ来い、と言う返事も無い。

「一人に・・・するなよ!居なくなるなよ・・・!!」

何も考えられなくなった。
頭の中が真っ白になって、生きる希望さえ失いかけた。
お前が居ない世界で・・・俺・・・生きて行けないよ・・・。





一騎くんに・・・かける言葉が見つからない。
あんなに辛そうにしてる一騎くん・・・見られないよ・・・。

私が「大丈夫?」って・・・声掛けても、頷いてくれるだけで。
目・・・腫れてて。
涙の後が・・・少し残ってて。
もう・・・一騎くんじゃない気がして、恐くなった。

「大丈夫だよ・・・遠見。そんな表情するなよ」

そんな表情って・・・何?
それは一騎くんの方だよ・・・!?
見てるだけで・・・心が痛いもの・・・。

「・・・でも本当は、大丈夫じゃ無いんだよな」

「遠見には言っていいよな」と一騎くんは笑った。

「俺・・・今・・・凄い苦しい、もう・・・辛い、よ」

そう言って、一騎くんは顔を伏せる。
固く握り締められた手の甲に・・・涙が落ちた。
私は何も言えなくなって・・・。
ただ・・・一騎くんの背中を擦って上げる事しか出来なかった。

「俺、もう・・・嫌だよ・・・っ」

初めて聴く、一騎くんの弱音。
皆城くんが居なくなった事で・・・生きる事を諦めそうになっている、気持ち。

「大丈夫だよ・・・一騎くん。皆城くんは・・・きっと生きてる」

―だから生きて。
私は・・・そう言いたかった。





視界には、蒼い空が広がっている。
風が気持ち良くて、清々しい気分になった。

「一騎!」

俺は呼ばれて、後ろに振り返る。
すると、そこには総士が居た。

「どうしたんだ?なに泣きそうな表情してるんだよ」

何も無かったように・・・総士は話しかけてくる。
―良かった。無事だったんだな。
そう思って、俺は総士に話しかけようとした。
けど・・・声が出なかった。

「一騎、この空のいろ・・・覚えておいて」

澄み渡った、夏色の空のいろ。
なぜ?と俺が首を傾げると「なんでも、だ」と言われた。

「僕が思い出せなくなった時・・・言って欲しいんだ」

この空はあの日の空のいろだよ―って。





白い・・・天井。
ここは―メディカルルーム?

「・・・良かった・・・一騎くん・・・目が覚めて・・・」

俺・・・何してた?
今まで、何してたんだ?

「一騎くん・・・蒼穹作戦から帰って来た後・・・倒れちゃったんだよ」

「体内の結晶化が・・・進んでたんだって」と遠見は言った。
そう言えば・・・遠見の顔が分かり辛い。

「蒼穹作戦から・・・もう一週間経ってる」

・・・一週間。
それは・・・俺が総士と約束をしてから、経った時間。
総士の顔・・・ちゃんと見れなかったけど・・・お前は微笑んでいた。
きっと・・・そうだ。

「遠見・・・肩・・・貸してくれないか?」

俺がそう言うと、遠見は俺の表情を一度見て・・・優しく微笑んでくれた。
そして、やっとの事で起き上がった俺の背中を支えてくれる。

「・・・外に行きたいんだよね?歩けそう?」

少し心配そうに訊ねて来た遠見に、俺は苦笑した。

「大丈夫だけど、やっぱり・・・肩・・・貸して欲しい」

すると遠見は力強く俺の背を押してくれた。
遠見の腕が、温かい。
自分は・・・ここに居るんだ・・・。
この世界に・・・生きているんだ・・・!
―そう思うと、涙が、溢れた。

「遠見・・・生きててくれて・・・ありがとう・・・」

自分の口から、自然とそんな言葉が出てくる。
今まで、そんな事・・・素直に言えなかったのに。
でも今は・・・違う。
今は・・・ここに居るって・・・実感が有るから。

「私もだよ、一騎くん。生きて帰って来てくれて・・・ありがとう・・・!」

泣きじゃくっている俺を慰めるように、遠見は力強く背を押してくれた。
―生きてるんだ。
それが・・・こんなに幸せな事だと、その時・・・初めて知った。





澄み渡る、蒼空。
雲ひとつ無い・・・冬色の蒼空。
吹き渡る、少しだけ春の匂いがする風。

少しずつ命が満ち始めている、竜宮島。



総士・・・俺は―ずっとここに居るから。
お前が帰って来るまで、この島を守るから。
だから・・・守れよな、約束。
俺も・・・守ってるからさ。


あの空いろ。
お前が帰って来た時、ちゃんと教えられる様に。


『あの時の空のいろは―――




Fin........




+後書+-----------------+

妙に、細長いです(ぇ

総士が居なくなる直前から、最終回後までを書いてみました。
内容がよく分からないですな;
「空」をテーマに書いてみたり。
一騎は作戦の後、まだ視力は回復していないワケですから。
まだ景色は見えないけど、感じる事はできる・・・みたいな。
・・・何が言いたいんだろう;(ぉ