―君が握ってくれた手の平の温もり。

僕は一度も忘れたことが無いよ・・・―






−回想−






「アーカディアン・・・プロジェクト?」

父さんに言われ、地下施設「アルヴィス」に始めてきた時の事だった。
その時そこに居たのは、僕と蔵前の2人だけ。
「なんで?」とは訊かなかったけど、きっとそれがこの島の代表の息子と養子の娘だからだろう。
そうじゃなければ・・・僕達はこのプロジェクトには参加せず、何も知らずに今までを生きて来ただろうから。

「そう。アーカディアンプロジェクトだ。この島に来る敵に対抗するための・・・人材を養うための計画だ」

その時は・・・まだ自分達が何をするのか、まったく分からなかった。
ただ、父さんの事には絶対従わなければいけない。
そう思っていたから・・・頷くしか出来なかった。

「・・・島の皆を敵から守って欲しいんだ。良いね?」

・・・今は父さんを怨んでいるかも知れない。
でも、感謝もしなければいけない。
そのプロジェクトがなかったら、僕らはもう此処に存在しないだろうから。




「・・・うんって・・・言っちゃったね。蔵前は・・・怖くないの?」

訊くのは少し怖かったけど・・・僕はどうしても気になっていた。
蔵前は本当にこのプロジェクトに参加する事を望んでいるのか、と。

「・・・私ね、皆を・・・守りたい。そうじゃなきゃ・・・この島も・・・いずれは東京みたいになるのよ?」

―もう存在しない、かつての首都だった都市。
この事を知っているのは・・・ごく一部だろう。

「だったら・・・私達が頑張って皆を守れるぐらいに、強くならないといけないじゃない」

たとえそれが自分を犠牲にする事だとしても。
・・・そう彼女は言いたかったんだろうか。

この島が無くなる事と自分が居なくなる事、どっちを選ぶ?
そんな質問をしたら、彼女はきっとこう言うだろう。

『この島も自分も無くなるのは嫌。でも、自分だけの犠牲でこの島が守れるのなら、私は後者を選ぶわ』と。

それぐらい・・・彼女も自己否定が強かったんだろうな。
この島が守れるのなら、なんでもする。
彼女は・・・そう言う子だったから。

だから僕は頑張れた。
左目が見えなくても・・・島を、皆を守れることが嬉しかったから。
僕にもできる事があったから。



それから数年。
蔵前の瞳が紅くなったり、僕が発熱で学校を数週間休んだり―。
色々な事が起きた。
それも全て、このプロジェクトのための犠牲の1つ。
島を守るのには自分を犠牲にする―。
そんな言葉の意味が分かった数年間だった。



「果林の次にこの機体に乗れるのは・・・真壁の息子・・・一騎くんなんだ」

機体―ファフナーの戦闘訓練が一段落付いて休憩の時、父さんに呼ばれて会議室に行った。
そこで次に乗るのは一騎だと聴いて・・・すこし不安になった。

「・・・一騎・・・なんですか?」

残念ながら、と言って父さん目を瞑る。
・・・しょうがない、と思っている自分が居た。
シナジェティック・コードの数値の形成率が高い子供が、搭乗者として選ばれる。
その形成率が高い子供が―一騎なのだ。

小さい頃から・・・一緒だった。
何をする時も常に一緒で、離れた事など一度も無かった。
だけど・・・僕がこの左目の疵を負ってから、気付くと一騎とは疎遠になっていた。
・・・疵を負わせたのが、一騎だったから。
でも、僕にも罪はある。彼だけが悪い訳じゃない。
そう思っても・・・素直に謝れないんだ。

今までいつも一緒で・・・喧嘩はする事は有ったけど、傷つけた事は一度も無かった。
どんなに相手が憎くても、傷つける事なんて・・・しなかった。
でも・・・傷つけてしまった。
僕が、一騎にしてはいけない事をしてしまったから。


僕が会議室から出ると、蔵前が待っていた。
彼女は微笑みながら「どうしたの?」と訊いてくれた。

「・・・そう、なんだ。真壁くん・・・なんだ」

父さんから話された事を話すと、蔵前は辛そうな表情をする。
でも「大丈夫よ」と再び微笑みを宿した。

「私がちゃんと強くなって皆を守るから。他の子たちに・・・私の様な体験をさせないから」

彼女はそう言って、冷めた僕の手の平を力強く握る。
その手の平は・・・とても温かく、心地良かった。




君が居たから、僕は強くなれたんだって・・・君が居なくなってから思う。

一騎から聴いたよ?
「私が居て・・・良かったって思う?」って訊かれたって。
僕は・・・君が居てくれて良かったって・・・思ってる。
君が居なかったら・・・僕は人一人の命も守れない、弱い人間になっていたと思うから。
だから・・・本当に感謝してるんだ。

君が居てくれたから・・・僕は皆を守れてる。
今日も・・・明日も。
ありがとう・・・蔵前。
君が居てくれて・・・僕は良かったって・・・思ってるから・・・―







+後書き+----------------------+
み・・・短い?(訊くなよ;

「DEAT SET」発売記念と言う事で、思い出しながらの総士の語り、と言う感じに致しました。
果林ちゃんってどんな子かな?
・・・そう言う事を考えながら書いていた小説でもあります。
本当に・・・果林ちゃんが居たから今があるんですよ。
彼女が犠牲無しでは、今の竜宮島は無いと思います。
・・・悪魔で私の考えですが;
果林ちゃんの活躍を描いて欲しいな・・・。