生きる事で得た想い。
運命と言う言葉で片付けられた未来への道。
「居なくなってはダメだ」と、木霊している思考。
それ以前に―全ての過ちさえ償えないと言う・・・小さな自分。
膨れ上がる感情に翻弄され、自分を見失って。
―沢山の大切なものを・・・失った。
−幻想の灯火−
パタンと分厚い本を閉じて時計を見ると―丁度15時を針が指していた。
自分がやらなければならない仕事を終わらせたのが9時頃だったから・・・と総士は考え、自分が7時間も読書に費やした事に気付く。
よく7時間も持ったなと驚きながら席を立ち、無機質な壁に囲まれた部屋を出る。
「・・・総士!」
同い年にしては高めの良く通る声が、総士を引き止めるように辺りに響いた。
良く知る声の主にふっと微笑み、
「一騎・・・また待ってたのか?」
と総士は振り向き、可笑しそうに、それでも嬉しそうに笑う。
少し照れた微笑を浮かべて、一騎は総士の隣に並んで共に足を進めた。
「来てるんなら入ってくれば良いのに」
総士がそう言うと、苦笑いを浮かべながら寂しそうに一騎は答えを返す。
「いや・・・俺もちょっと用事があったから」
「―!・・・そうか・・・」
ハッとして声のトーンを落とした総士に、慌てて「大丈夫だから!」と一騎は反論する。
「本当に大丈夫だから。・・・健康診断で行っただけなんだよ。でも・・・あの頃のような身体じゃ、無くなったんだけどな」
―元には戻れない。
そんな思いを心に馳せながら一騎は呟く。
自然に震えだした身体が、自身の不安や恐怖を表しているかのようだった。
「・・・俺の身体、どんどん俺が知らない身体になって行く。ファフナーに乗る者の代償だから、しょうがないんだよな」
肩を抱いて話す一騎に溢れ出す感情が抑えられなくなって、総士はその肩を引き寄せる。
「・・・"怖い"のは俺だけじゃないって分かってる。でも・・・!」
総士の肩に頭を預け、一騎は今まで堪えていたものを押し出すように嗚咽を漏らした。
「ね・・・俺・・・皆を守れるかな・・・?」
背中に回された総士の腕の体温を感じながら、一騎は質問をする。
その質問を正面から受け止め、総士は優しく答えを返した。
「守れるよ、お前なら。それに僕も傍に居る・・・そうだろ?一騎」
「・・・うん・・・」
またひとつ、一騎の頬に涙が流れる。
力強くなった腕の中に身を預けたまま、一騎はこれが夢で無いように・・・と、強く願った。
「・・・う・・・」
―夢を見た、と総士は思う。
動かない体。何かに浸食されていく不快感。
少し眠っていたのだろうか。それとも・・・"同化"にともなう痛みで気を失っていたのだろうか。
『お前の仲間は我々が始末する』
少しばかり前に聴いた、この言葉。
視界に映る黄金に輝く触手に取り囲まれた中で、モニターが映っている。
意識すると、総士自身を奪還しに来た一騎達の姿がモニターに映し出された。
「・・・一、騎・・・」
お願いだから、もう一度・・・―。
そう思った瞬間、再び総士の身体に激痛が駆け抜けた。
身体を太い針で奥深くまで刺されたような感覚。
その痛みの中心から、段々―なにも感じなくなっていく。
「―ッ!!」
ピシ、と首元から這いずり上がる翡翠色の結晶が、左眼の・・・あの疵の直ぐ下に届く。
「やめろ!!この疵に触れるな!」
力を振り絞り叫んでみるが、結晶が左眼を覆った。
「・・・ぅあッ・・・!!」
激痛により呻き声を漏らすと、眼前に居た総士を同化したコア―イドゥンが不適に笑う。
―力一杯、殴り倒したいと思った。
「くそっ・・・」
動こうとしても、もう動かない身体が痛みと恐怖を生んでいる。
このまま居なくなるのかな―。
再び遠のいて行く意識の中で、総士は思い、目を閉じた。
『総士、俺・・・絶対守るよ。島も、皆も・・・』
瞼の裏に焼き付く、大切な友人の姿が浮かぶ。
砂浜を裸足で歩きながら、総士は友人の声と、静かな小波の音色に耳を傾けていた。
『・・・だから、お前も・・・―』
―その先の言葉は、友人の笑顔とともに・・・闇に掻き消された。
闇色に輝く球体。これをこの世界では"ワーム・スフィア現象"と呼ぶ。
この球体に飲み込まれたものは―たちまちこの世界の何処からも"居なくなってしまう"。
「此処に・・・総士が居るんだな・・・」
白く滑らかな曲線を描く機体―マークザインに乗った一騎が、不安や焦燥感を噛み殺しながら呟く。
―震えが止まらない身体。一騎が「大丈夫・・・」と自分自身に言い聞かせるように言った。
「一騎くん、早く皆城くんを。私たちは・・・此処で待ってるから」
脳裏に響く真矢の声が励みとなり、一騎はその球体に指を触れ、ゆっくりと挿し込んだ。
「―っ」
電気が走るような感覚が走り痛みに顔をしかめながら、一騎は中へ入る。
闇色に輝く球体の中は、闇色でしかなく、その中心に色褪せた金色の触手が絡まった物が静かに佇んでいた。
「―総士、総士ッ!」
一瞬でその物体の中に総士が居ると理解した一騎は、急いで両手を物体に添える。
両手を添えた瞬間―その物体が脈を打った。
「―!!」
腕全体を太い針が貫通したような激痛が走り、一騎は意識を飛ばしそうになる。
「・・・俺は・・・お前を拒まない・・・」
意識を何とか保ちながら、呪文のように呟いた。
「・・・もう二度と・・・拒まない・・・!」
―呪文だったのかも知れない、と一騎は思う。
総士と一緒に帰る。そう約束したんだ、皆と。
『受け入れる事も、ひとつの答えだよ、一騎』
「俺は・・・お前だ、総士!」
一騎が叫ぶと同時に、マークザイン全体が緑色の結晶に包まれる。
そして―その結晶が一騎の体内へと飲み込まれていく。
「―ッあ・・・」
思考が、真っ白になった。
―本当は、僕は・・・自分が"まぼろし"かもしれないと、幾度か思った事が有る。
「僕の身体はもう残っていないんだ・・・一騎」
もう二度と動かない身体。
キミに触れたり、抱きしめたり・・・出来なくなってしまった。
「・・・嘘だろ?嘘って言えよ!!」
「嘘じゃ・・・無いんだ・・・」
少し自嘲気味に言ってしまった。
流れないと思っていた涙が、次々と溢れ出て流れていく。
「でも、居なくなるって訳じゃない。僕は一度、フェストゥム側に行く」
もう一度。
キミの笑顔が見れるなら、僕は。
「その時まで・・・さよなら、一騎・・・」
Fin.....
+後書+
良く分からないですねー;
自分、一体何が書きたかったんだろう・・・・。
こう言う内容が多いのは・・・きっと最終回前後が見たいからかもしれないです(ぇ
ただ単に好きなだけなのか・・・!?(爆
なんかもう・・・ごめんなさい・・・;